空き家になった実家を売ったほうがいいのか、残したほうがいいのか。この段階で答えを出そうとすると行き詰まります。判断に必要な材料が、まだ手元にそろっていないからです。
最初から決めていただく必要はありません。この記事では、その材料をどう集めるかをご案内します。どれを選ぶかという判断そのものは扱いません。
集める材料は5つ。どこで分かるかが違います
必要な材料は大きく5つですが、同じ場所では手に入りません。どこで分かるかで分けます。全部を一度にそろえる必要もありません。
- 手元の書類で分かるもの……維持費の一部(税、電気・水道、保険)
- 現地に行かないと分からないもの……建物の状態
- 人に聞かないと分からないもの……今後その家を使う可能性、ご家族の考え
- 依頼して初めて分かるもの……売った場合の価格の具体的な目安
現地へ行ける回数が限られていても、手元で進められる部分があると分かります。
建物の状態|見る範囲と、記録の残し方
外から眺めただけでは分かりませんが、専門の調査なしに何も分からないわけでもありません。自分で見て記録できる範囲と、そうでない範囲を分けておきます。
自分で見て分かる範囲
室内では、次のような場所を見ておきます。
- 天井と壁の上部のしみ、変色
- 押し入れやクローゼットのにおい、カビ
- 床を歩いたときの沈み、ふすまや戸の開閉の引っかかり
- 水回りの床や壁の変色
外回りは、次のとおりです。
- 地上から見える範囲の屋根材のずれ、雨どいの外れ
- 外壁と基礎のひび
- 庭木や塀が隣地や道路にかかっていないか
ここで見るのは今の状態を記録するためで、直すかどうかを決めるためではありません。所有を続けるあいだ毎月確認しておきたい場所は空き家の管理|月1回見るべき7か所にまとめています。一度きちんと見るのと続けて見るのとでは、見る場所が違います。
自分では判断できない範囲
一方で、次のような部分は見ても分かりません。
- 屋根の上、床下、天井裏
- シロアリの被害の有無と範囲
- 傾きが構造によるものか、床材だけの問題か
見えていないことと、問題がないことは別です。気になる箇所が出ても原因や直す範囲はご自身で判断せず、写真とメモを残してください。誰に何を見てもらうかを決める材料になります。
更地にすることも選択肢に入る場合、建物があるうちにしか確認できない土地の条件(接道、再建築の可否、境界)があります。この点は記事末尾の関連記事で整理しています。
材料にするための記録の残し方
見た内容は、あとで比べご家族に見ていただくため、写真とメモで残します。
- 同じ場所を、同じ角度から撮る
- 全景と近景をセットで撮る
- 気になった箇所は、写真と短いメモを組にする
スマートフォンの写真には、多くの場合、撮影日時が記録されます。次も同じ場所を撮れば、傷みが進んでいるかが分かります。この記録は、ご家族への説明にも査定のときにも使えます。
維持の負担|1年分に置き換えると比べられます
持ち続ける場合の負担は、月ごと回ごとにばらばらに出ていくため全体像が見えません。1年分に置き換えると比べられます。
手元の書類から分かるもの
次のものは、現地へ行かなくても確認できます。
- 固定資産税・都市計画税……毎年届く納税通知書で年額が分かります。課税明細書が同封される自治体では、土地と建物の内訳まで確認できます。様式は自治体によって異なります。
- 電気・水道・ガス……契約を残していると、使っていなくても基本料金がかかるのが一般的です。金額は契約内容で変わるため、請求書や検針票でご確認ください。
- 火災保険……保険証券に年額が書かれています。空き家になった場合の扱いは契約ごとに違うため、保険会社または代理店へご確認ください。
書類の保管場所が分からなくても、請求書の送付先や口座の引き落とし記録から手繰れます。
書類に残らないもの
一方、次のものは請求書が残らず、忘れられがちです。
- 草刈りや庭木の手入れを誰かに頼んだ場合の費用
- 現地までの交通費(片道の距離や運賃 × 年間の往復回数)
- 現地で使っている時間(半日、1日を年に何回か)
費用は地域や敷地の広さ、頼み先で変わります。金額より、年に何回どれくらいの手間をかけているかを書き出すほうが比べやすくなります。
「毎年かかるもの」と「いつか来る出費」を分ける
書き出したものは、2つに分けます。
- 毎年かかるもの……税、基本料金、保険料、手入れ、交通費、時間
- いつか来る出費……雨漏りや設備の不具合のように、傷んだときにまとまってかかるもの
前者は足して年額にできます。後者は金額として見込めないので、起こりうることとして持っておきます。人が住まなくなった家で何が進むのかは空き家を放置すると起こることにまとめています。
年額が出ると、この負担を自分で続けるのか、見回りや通風といった定期的な確認を外に任せるのかがはっきりします。任せる場合の作業内容・頻度・料金は空き家管理サービスでご案内しています。現地を定期的に確認して写真で報告するもので、専門の調査とは別のものです。
今後使う可能性と家族の考え|材料をそろえてから聞きます
残りの2つは、書類にも現地にもありません。人に聞いて言葉にしていただく必要があります。
「いつか使うかも」を時期で言い換える
「いつか使うかもしれない」のままでは、ほかの材料と並べられません。時期を入れた言い方に置き換えます。
- 「当面は使う予定がない」→「今のところ、数年のうちに使う予定はない」
- 「子どもが戻るかもしれない」→「進学や就職の時期に、あらためて考える」
ここで挙げた区切り方は、制度や手続きで決まっているものではありません。見通しを並べられる形にするための言い換えの例で、ご自身の事情に合う区切りで構いません。使う可能性のある方とその時期を書き出し、今の事実として記録するだけで十分です。
家族には、材料を渡してから聞く
ご家族の意見が分かれるのは、それぞれ持っている情報が違うためであることが多くあります。材料を共有してから意向をうかがいます。
先にお渡しするとよいのは、建物の写真、1年分の維持の負担、価格の目安の3つです。同じものを見た状態で話すと、印象だけのやり取りになりにくくなります。話し合いの進め方には、ここでは踏み込みません。
売った場合の価格|査定で具体的な目安を確認する
5つの材料のうち、これだけは自分で調べきることができません。
周辺の売り出し価格や取引の情報から、おおまかな水準はつかめます。ただ同じ地域でも、土地の形や接道、建物の状態で差が出ます。その物件の具体的な目安を知るには査定が確実です。
査定で得られるのは、現時点でどのくらいの価格が考えられるかという見立てです。売れる金額を保証するものでも、将来の価格が分かるものでもありません。売ると決めていない段階でも取れます。査定の進め方は不動産査定についてでご案内しています。
そろえた材料を1枚に並べる
5つがそろったら、1か所に並べます。
- 建物の写真とメモ
- 1年分の維持の負担
- 今後使う可能性と、その時期
- ご家族の意向
- 価格の目安
並べた時点で、ご家族の中に「こちらかな」という感覚が出てくることが多くあります。全部を決めきる必要はなく、今年は管理を続けて来年また考える、という決め方もあります。
そのうえで、どれを選ぶかを整理したい段階になりましたら空き家について相談したい方へをご覧ください。
よくあるご質問
材料が全部そろわないと相談できませんか?
そろっていない状態でご相談いただけます。どこが分からないかをお聞かせいただければ、足りない部分から確認します。
鍵がない、遠方で中に入れない場合はどうすればよいですか?
手元の書類と外回りから分かる部分だけでも進められます。室内を見る必要が出た段階で、鍵をどなたが持っているかから整理します。
査定を受けたら、売らないといけませんか?
いいえ。価格を知るための査定としてご依頼いただけます。査定後に売却を進めるかどうかは、あらためてお決めください。
まとめ|集め方を決めれば、材料は集まります
必要な材料は、建物の状態、1年分の維持の負担、今後使う可能性、ご家族の考え、価格の目安の5つ。入手先が違うので、順に進められます。
材料がそろえば、判断はご自身でできます。そろわないまま話し合っても、時間だけが過ぎてしまいます。
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